こだま(あるいは「街路の神秘」)

作家名ポール・デルヴォー Paul DELVAUX
制作年1943年
技法、素材油彩、画布
寸法105.0×128.0
分野絵画(海外)
所蔵作品登録番号FO198800002000
解説ベルギー、リエージュ州の小村アンテナイトに生まれる。後の作品に時折現れる骸骨のモティーフは、子供の頃に見た人体標本や人骨標本の記憶にさかのぼる。ブリュッセルの美術アカデミーで学び、在学中に駅をモティーフにした最初の作品を制作した。1930年以降フランドルの表現主義の影響を受け、またブリュッセルの見本市で見せ物小屋「スピッツナー博物館」に陳列された人体標本と骸骨に触発され、シュルレアリストの画家が出品した1934年のミノトール展でのデ・キリコの作品に着想を得て、徐々にシュルレアリスムの作風に変化した。夜の駅や建物を舞台に、無表情で理想化された美しい半裸の女性が群をなして夢遊病者のようにさまよう、非合理で幻想的な世界を描いた。
1943年に詩人ポール・エリュアールの依頼で制作した作品で、別題に《街路の神秘》とある。月夜に円柱が連なるギリシア神殿風の石造りの建物が建ち並び、画面右下から画面中央左奧へと石畳の道が延びている。続く遠方には山が望まれる。道に並行した石壁も、月明かりに冷たく光り、石壁に沿った道は舗装が未完のまま、小石が転がっている。建物や人物の影の描写にデ・キリコの影響が認められる。虚ろな表情で同じポーズをした三人の全裸の女性は、道なりに歩みを進め、通り過ぎて行こうとしている。光の中に浮かび上がり、こだまの妖精に化身した女性たちは、左手を挙げ、耳を澄まして記憶をたどっているかのようである。それぞれの女性の大きさは、周囲の建物の大きさや距離には正確に比例しておらず、空間は歪められている。静謐な雰囲気だが、こだまが石に反響し、また光も建物の合間に増幅する神秘的な世界が展開されている。(F.M.)

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