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あなたがたの考え(善悪)は紙に書かれる。この紙きれを火にくべよう。紙が燃えたらその考えこそ過ちとなる。紙は炉に投げ込まれ、しばらく火の中にあったが、やがて焼けも焦げもせずふわり、ふわりと飛びだしていく。楽園に神が生ぜしめた(花も葉もめだたぬ)善悪を知る一本の木。その木から(禁じられた果実と同じく)紙きれも作られたのである。/天使は翼があるから鳥という。顔かたちは玉のように清らか、声のさまも女のよう。心を寄せても返事は文ばかり、耳に入るは羽音だけ。/野には(この世界では見えぬ)育ちも摘まれもしない無数の種子が眠る。言葉は種子である。あなたの見る水は、いつのまにか漲り涸れる河のように水蒸気が作るのではない。地の底から、泉のように想起されるのである。
作家名 | 岡﨑乾二郎 OKAZAKI Kenjiro |
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制作年 | 2009年 |
技法、素材 | アクリル、画布 |
寸法 | 141.0×221.0/ 141.0×87.0/ 141.0×141.0 |
分野 | 絵画(日本) |
所蔵作品登録番号 | JO201000003000 |
解説 | 3点で一組の作品である。20年近く続いている岡﨑の絵画シリーズは、筆触が絵画の構成単位である。その筆触は、形態と色彩のフーガのように変転を繰り返しながら画面に広がる。一見恣意的に散りばめられたように見える筆触は、作家が厳密に計算した位置に配されている。それゆえに、恣意的に置いたら現れることのない、垂直線や水平線、縁を白い地の部分に想定することが可能である。たとえば〈左〉のキャンバスでは、真ん中に水平線が、そして画面中心よりやや左上に赤・緑・黄色・藤色の筆触群が形作る大きな円が想定できる。 作品は絵画的であると同時に即物的である。それぞれの筆触は、ローキャンバス(実際には透明なアクリリル絵具が薄く塗られている)の上で浮遊しているかのように見える。色彩の濃淡は、地の白の透過度、換言すれば塗られたアクリル絵具の厚みによって変化する。透明度のあるアクリル絵具は生々しいつややかさをもち、その盛り上がりは、思わず触れてみたくなるほど触角を刺激し、時には舐めてみたくなるほどの味覚までも刺激する。 一番大きな〈左〉の縦228㎝と横141㎝の比率は1.62対1の黄金比になっている。その横幅の141㎝は、正方形をなす〈右〉の一片の長さと等しく、〈中〉の縦の長さとも等しい。この141㎝は〈中〉の横幅87㎝と黄金比である。作家は各作品の関係ばかりではなく、それらが展示された時の相対的な位置関係までも厳密に定めている。〈左〉の縦の長さ228㎝は、〈中〉と〈右〉の間に54㎝(〈中〉の横幅の黄金比)の間隔を開けた時の〈中〉と〈右〉の総横長であり、〈左〉と〈右〉の間隔でもある。〈左〉と〈中〉の間隔87㎝は〈中〉の横幅と同じであり、〈左〉の横幅の黄金比である。このように各作品のサイズや配置は、厳密な数理的な規則に則っている。 作品に異常なまでの長い題名を付けるのは、岡﨑の特徴のひとつでもある、この作品に置いて題名の長さは作品の大きさと相関関係にある。言葉の転移を繰り返す題名は、言語による一種の複雑な構築物となっており、従来の題名の在り方とは異なるレベルで作品と対応している。 |
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