ツバメコノシロ

ツバメコノシロ ( Striped threadfin )

名称(ヨミ)ツバメコノシロ
中分類スズキ目
小分類ツバメコノシロ科
形態20~40センチほどのボラに似た魚で、時に全長50センチ、1.2キロを超える中型魚。全体にやや黄色みがかった銀色で、一見すると常識的な国内の魚とはイメージが異なり、違和感がある。アゴナシと広く呼ばれる通り、サメのように鼻(吻)が出て、あごが下にあるため口がとても小さく見える。吻や目は脂瞼(しけん)と呼(よ)ばれる、厚く透明な皮におおわれている。概して、ボラのひれの先端を長く伸ばし、尖らせたような形態で、特に深く二叉し上下端が伸びた尾びれが目立つ。またツバメコノシロ科の特徴として、胸びれが下方にあり、その下部が遊離軟条(柔らかい骨が一本一本独立したひれ)が、長く伸びている。本種は遊離軟条が5本、ほぼ見た目が同じナンヨウアゴナシでは6本。

※魚類の体長には、全長と叉(さ)長があり、全長は頭の先から尾の先、叉長は頭の先から背骨の延長の尾びれの後端である。そのため、尾びれ中央部の切れ込みが大きい魚種ほど全長と叉長の差が大きい。
概要【分布】
太平洋西部からインド洋の暖海に分布し、国内では福島県以西の太平洋岸、福井県以西の日本海沿岸以南で見られる。徳之島では、外洋に面した砂浜で見られる。内地で見られる小型の個体は、稚魚の間に海流に流された死滅回遊と考えられる。

【生態】
120メートルより浅い砂地に生息し、底生生物を捕食するとされる。繁殖期は6~8月ごろ。徳之島では、オニヒラアジなどが入りにくい、砂浜の浅い波打ち際を回遊し、数センチ~15センチ程度の様々な稚魚などを捕食していると考えられる。同じ砂地に生息する、ボーンフィッシュことソトイワシの幼魚を捕食した例もある。濁った水中や夜間には、胸びれにある遊離軟条を用いて海底で小魚、ゴカイ、甲殻類などを検知し捕食する。遊離軟条は、櫛状の構造が見られ、触覚のほか何らかの感覚器官を内蔵しているようである。

※参考、胸びれの遊離軟条が感覚器として発達した魚類は他に、カサゴ目ホウボウ科のホウボウ、カナドなどが見られる。左右3本ずつの遊離軟条で海底を歩くようにして、砂地に潜むエビ・カニやゴカイなどを探して捕食する。

【島内の目撃情報】
外洋に面た砂浜から、ルアーなどで釣獲されることがある。天城町内では真瀬名川の河口、徳之島町では山(さん)や花徳(けどく)など。以前は、地引網体験などで漁獲されていた。

※アゴナシ、ハナブットゥーなどと呼ばれている。一見、小骨が多く身が柔らかそうな印象があるが、反して美味しい魚である。例えば刺身は上品とされるマダイやヒラメより癖がなく、さらに驚くほどどうま味が強く、美味。夏はさっぱりしており、秋冬に脂が乗る。歯ごたえがしっかりしており、水揚げの次の日でも、薄造りに向くほど。あら汁にすると濃い出汁が出るものの、生臭さが極端に少ない反面、モズクのような海藻に近い香りがする。近縁種ナンヨウアゴナシは東南アジアやハワイなどで養殖され、食用魚として人気がある。

※釣りについては、一般的には確立されていないようだが、奄美群島以南で居場所となっている砂浜海岸が特定できれば、比較的簡単にルアーで釣獲できる。リーダーは2~3号、5~8グラム前後のジグヘッドに3インチ前後のソフトルアー、グラブやシャッドテールを刺し、波打ち際から10メートルほど沖へ投げ入れ、ゆっくりと波打ち際を引いてくるだけで、特別なテクニックは必要ない。波打ち際という特殊なポイントでありながら、特に朝夕のまずめ時を意識する必要は無く日中に釣れるが、天気や風により泡の広がりや濁りに影響を受けやすく、その日の最適な条件を把握することが釣果への近道となる。
観察できる場所リーフがなく開けた砂の海岸、河口

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