Wreck of Time 90

所蔵資料登録番号A007841
作品・資料名Wreck of Time 90
制作時代・年代平成2年(1990)
窯・作者三島喜美代 MISHIMA Kimiyo
制作/生産地(現在の地名)日本、岐阜県土岐市
資料点数16点
寸法高53.0 幅110.0×110.0
寄贈者上田磨子氏寄贈
作品解説 日本を代表する美術家・三島喜美代(1932-2024)は、絵画を出発点として1950年代に現代美術家としての活動を開始した。60年代には新聞・雑誌などの印刷物をコラージュした作品やシルクスクリーンを用いた平面作品を制作してたが、70年代からシルクスクリーンで印刷物を陶に転写した立体造形を手掛け、大きな注目を集めた。膨大な情報を含有する印刷物と、割れやすく脆い陶という素材を組み合わせることで、氾濫する情報に埋没する恐怖感や不安感を表現した。一方、50年代以降大きな動向となっていた前衛陶芸とは活動の一線を画しており、自身では陶芸家でないとしている。
 やがて三島の意識は情報媒体としての印刷物から、大量の新聞や雑誌がすぐに消費・廃棄されるように、情報から廃棄物へと次第に移っていく。なかでも空き缶や段ボールなど身近な廃棄物をモチーフとした陶造形、産業廃棄物を高温で処理し際に生まれる溶融スラグを素材とした作品はその代表作である。晩年は鉄くずや廃材を取り込んだ制作も手掛けており、三島の陶芸にとどまらない幅広い視野とアプローチを示している。
 本作は90年代の三島を代表する作品の一つであり、九州の火山灰のなかに、さまざまな廃棄物を混ぜ込んで固めた大作である。なかには陶に新聞の転写が施されたものも混入されており、本作以前の流れもうかがえる。三島自身は言及していないが、折しも1990年は雲仙・普賢岳の大規模噴火が起こった年で、自然の脅威と人の営みのせめぎ合いを感じさせる。

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