木造慶円上人坐像 附 台座天板

分類県指定
種別彫刻
所在地安城市安城町 安城歴史博物館(寄託)
所有者本證寺
指定年月日H13.8.24
時代南北朝 貞和3
詳細解説像高86.9cm、桧材、寄木造(よせぎづくり)、彩色。
基本的には写実的な描写を重視した慶派(けいは)の特色を受け継ぐものの、面相の肉付けや皺の処理には多少の形式化がみられ、着衣の形式も衣文線(襞)(ひだ)の連続が不明瞭になるなど、全体として誇張と省略がはじまり、鎌倉様式の終末を感じさせるものがある。しかしなお、面相には上人の強靭な意志と個性が十分に表現されており、室町時代以降の肖像彫刻に多くみられる類型的表現にはいたっていない。
さらに特記すべきは、解体修理の際、後頭部から首周辺にかけての部材内部に当初の墨書銘が発見され、像の制作年代が判明したことである。銘文の細部についてはなお異説を残しているが、大意は「ちゃうわ(貞和)三ねん(1347)九月廿日」に造立され、仏師は「ほんけう(法橋)きやうけい」である、と読める。仏師の「きやうけい」については詳らかにし得ないが、貞和3年の造立とすれば、上述した彫刻としての表現的特色と矛盾するところがなく、南北朝初期の一基準作となりうるものであり、また、真宗肖像彫刻の銘文を有する最古級の例ともなり、美術史的・信仰的価値はすこぶる大きい。

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