木造菩薩立像(伝十一面観音)

分類県指定
所在地岡崎市滝町
指定年月日2022/01/28
時代鎌倉
13世紀
詳細解説瀧山寺宝物殿に安置される大小2軀の十一面観音立像のうち、小さいほうの像である。現状は十一面観音像であるが、頭上の十一面はいずれも後補で、改変の跡もみられることから、当初は頭上面をもたない菩薩形像であった可能性が高い。したがって指定名は「木造菩薩立像(伝十一面観音)」とする。本像と同時期に類似した形姿の弥勒菩薩像が複数知られることから、本像も弥勒菩薩像であったものかもしれない。
ヒノキによる割矧(わりはぎ)造りで、 玉眼嵌入(ぎょくがんかんにゅう)。肉身部は金泥塗り、着衣部は彩色仕上げとする。着衣部には様々な彩色・切金(きりかね)文様が施される。
本像にみられる特徴的な天衣のまとい方(右肩から正面で肘の外側を垂下し、いったんたるんだのち前膊(ぜんはく)に外から内へ掛かる形式)は鎌倉時代初期に活躍した運慶(?~1223)・快慶(?~1227 以前)やその周辺の作家には採用されず、少し遅れる時期に奈良を中心に活躍した善円(1197~1258。1249 年頃から善慶と改名)やその周辺仏師の作例にみられる形式である。髻(もとどり)上部の 巴形の結び目なども同系統の作例やそれに先行する作例にみられ、面貌その他の作風にもそれらとの共通性がうかがわれる。以上から本像は善円系統の仏師が 13 世紀前半の比較的早い時期に製作したと推定される。滝山寺には運慶作と考えられる聖観音(しょうかんのん)及び梵天(ぼんてん)・帝釈天(たいしゃくてん)立像(重要文化財)が伝来するが、加えて善円系統の作例が伝わっているのは誠に興味深い。本像は鎌倉時代彫刻史研究にとって重要な位置を占める一作といえよう。

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