絹本著色地蔵菩薩像

分類県指定
種別絵画
所在地西尾市亀沢町 西尾市岩瀬文庫(寄託)
所有者養寿寺
指定年月日H10.2.20
時代朝鮮高麗
詳細解説一幅 縦101.0cm、横56.0cm 掛幅装
本図は、頭部を頭巾で包んだ、いわゆる被帽形式の地蔵菩薩を正面向きの独尊像として描いている。右手に透明の宝珠を捧げ、左手を膝上に当て、方形の宝台に左足を踏み下げて半跏に坐す。画面に傷みがあり、当初の画趣はかなり損なわれているが、高麗仏画特有の精緻な文様表現を多用した、装飾性の強い華麗な作品である。すなわち、頭巾・法衣・僧祗支・裳・瓔珞(ようらく)・宝台などが、菊花文・牡丹文・唐草文・宝相華文などの文様で精緻に飾られている。本図の地蔵菩薩は、やや角張っているが丸く大きい顔面と独特の顔貌表現、およびどっしりとした重みのある体軀の表現などに特色があり、そうした特徴は根津美術館本や徳川美術館本などの高麗時代の被帽形式の地蔵菩薩と共通する。本図も14世紀の制作と考えて大過ないであろう。本図のような被帽形式の地蔵菩薩の源流は、敦煌絵画に見られるが、その他に南宋時代、大理国の張勝温「梵像図鑑」(台北故宮博物館)中の地蔵菩薩、四川省大足石窟の宋代彫刻、元時代の「十王図」(静嘉堂文庫美術館)第五閻羅王中の地蔵菩薩などにも見られる。しかし、被帽形式は、とりわけ高麗時代に流行した形式で、高麗時代の作例は少なくない。もっとも、他の高麗仏画の被帽形式の独尊像はほとんどが立像であり、台座に半跏の姿で坐す場合は、地蔵十王図として十王を伴ったり、僧道明や閻魔王などを伴ったりして表されており、本図のような独尊の半跏像は大層珍しい。

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