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09-02-04. 昔ばなしの広場 キツネの親子

資料ID301
名前(漢字)ムカシバナシノヒロバ キツネノオヤコ
名前(英語)Fox parent and child, a square for the folklore
テーマみどりの散歩道コース
コース09.呑川・自由が丘コース
コンテンツ02.熊野神社
資料紹介大岡山の商店街のにぎやかな通りを少し入ると、静かな住宅地になります。
「もう五十年も前になりますかねぇ」
お花ばあさんは、子供の頃を思い出すように話し始めました。
「まだ目蒲線(メカマセン)の工事が始まったばかりの頃でねぇ。この辺は一面の原っぱでしたよ。所々に農家や文化住宅があって…。そうそう雑木山もありましたね」
おばあさんは、田んぼや竹林のあった昔を懐かしみながら続けました。
「ある夜中でしたよ。『トン、トン、トン』と戸をたたくような音がしたの」
「お花ちゃん、お客様かもしれないよ」と、おっかさんが言うので、土間のぞうりをつっかけて、玄関の戸を開けてみましたが、誰もいません。
「誰もいないよォ」
私は戸を閉めて部屋に入りました。しばらくすると、また「トン、トン」。私はまた玄関の戸を開けましたが、やっぱり誰もいません。こんな夜、近くのいたずら坊主が来るわけはありません。風が吹いて、小枝が飛んでくるような夜でもありません。
「変だなぁー」
それからしばらくたった春の暖かな夕方です。また「トン、トン」と音がします。まだ明るかったので、私は玄関の戸を開けずに、踏み台に乗って、明かり窓から外をのぞきました。
「あっ、えり巻きが落ちている」
私はずっと前、東京から人力車に乗ってきたお客様を思い出しながら、おっかさんを呼びました。おっかさんは「シィッ」と指で口をおさえながら、窓からのぞきました。私も背伸びしてのぞきました。そこには、親子のキツネが西日にあたっていました。大きな方のキツネがふさふさとしたシッポを動かすと、ちょうど戸に当たって「トン、トン」とたたいているような音がするのでした。
「かわいいね」
私たちは、そっと窓の戸を閉めました。
データ利用条件教育目的での使用については、権利所有者の許可は必要ありません。
コース紹介https://jmapps.ne.jp/9093/det.html?data_id=266
コンテンツ紹介https://jmapps.ne.jp/9093/det.html?data_id=298

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