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04-04-02. 昔ばなしの広場「めぐろのさんま」

資料ID168
名前(読み)ムカシバナシ ノ ヒロバ「メグロノサンマ」
名前(英語)Pacific saury (Cololabis saira) in Meguro (Tokyo), a square for the folklore
テーマみどりの散歩道コース
コース04.目黒川コース
コンテンツ04.目黒区民まつり
資料紹介森のむこうの駒場野は申し分ない鷹(タカ)狩り日和(ビヨリ)です。孫六爺さんは「お鷹狩りも一段落したかな。静かになったな」と、はる婆さんに話していました。
「どれ、秋刀魚(サンマ)でも焼くベえ」と、七輪を外に出し、渋団扇(シブウチワ)でパ夕パ夕やりながら火をおこし、秋刀魚を焼きはじめました。
突然馬のひずめの音が家の前でとまり、狩装束(カリショウゾク)のお侍が四人はいって来ました。
「お侍さん、お鷹場はだいぶむこうだで。どうしてここまで」
「いや、鶉(ウズラ)を追って松林に入ったら方角をちがえてな」
「お侍さん、それじゃ、御空腹だんべ」
さっきから魚のこげる匂いに腹の虫を刺激されていた一人のお侍さんが「そうだな。朝早かったからな」
「おロには合いますめいが、麦飯とさんまぐらいなら」
「では、馳走になろう」
一番偉そうなお侍さんが答えました。
はる婆さんは裏から笹の葉を取ってきて皿に敷き、ジュウジュウ音のする焼たての魚をのせて出しました。はる婆さん自慢のお漬物もそえて。お侍さんたちはよほどお腹がすいていたのか、ごはんもみそ汁もおかわりをしました。
「この魚は何と申す」
「お侍さん、ご存知ねぇんで。秋刀魚ですだ」「今が一番おいしくて、値も安く、百姓でも買えますた」
「そうか、馳走になったな。爺も婆も達者でな」
お侍さんはお礼にと言って小判二枚をおいていきました。持ったこともないお金にびっくりした二人は後から深々と頭をさげました。
将軍様はお城にかえって台盤所に秋刀魚を出すようにお命じになりました。台盤所では「何で上様は下々の食べる秋刀魚を御所望(ゴショモウ)になったんだろう」と調理の仕方に迷いました。翌日の昼、白いごはんとお澄しと、煮物の他に秋刀魚がニ切出てきました。大根おろしと醤油もそえて。でもあのジュウジュウいっていた油の香りも焼こげあともありません。多分蒸して油ぬき、骨ぬきをしたのでしょう。
上様はだまって食されましたが、心のうちで爺と婆のもてなしの焼たてのさんまの味を懐しんでおられた事でしょう。「秋刀魚は目黒に限る」と言われたかどうか。きっと後の噺(ハナシ)でしょう。孫四郎茶屋の島崎家に残っていた文書には、お団子やおでんを差し上げたことは載(ノ)っていますが秋刀魚のことは残っていません。
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コース紹介https://jmapps.ne.jp/9093/det.html?data_id=150
コンテンツ紹介https://jmapps.ne.jp/9093/det.html?data_id=166
 徳川 吉宗
関連ワード秋刀魚

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