仏教伝来 小下絵

登録番号011001
材料・技法本画小下絵
制作年1959
サイズ31.5×37.0cm
作品解説インドへの長い旅の帰り道、オアシスにいる玄奘三蔵を描いている。二人の僧侶の周りには木々がみずみずしい葉をつけ、草花が美しく咲き乱れ、鳥たちがさえずりながら飛び交じっている。当時の平山郁夫は画業の行き詰まりや健康、経済面での不安を感じ、精神的にも追い詰められた状態になっていたという。「死ななければならないのなら、その前に一枚でもいいから、心に残る絵を描きたい」と念じながら制作したのが、画壇デビュー作となった《仏教伝来》(1959年・佐久市立近代美術館蔵)であった。本作は画家がその生涯、手元に置いていた同作の小下図である。
平山郁夫は言う。「東京に戻ってしばらくして、新聞の小さい記事がふと目にとまった。東京オリンピックの聖火がギリシャからシルクロードを経てもたらされるという話だった。じっと見つめていると、仏法を求めて砂漠を往復した三蔵法師の姿が、浮かび上がってきた。死ぬような思いをして八甲田山の写生旅行をしてきたあとだけに、法師の苦しみがある種の実感を伴って分かった。実感があるからこれは描けそうだという気がしてきた。これが最後の絵になるかも知れないという張り詰めた気持ちもあった。出来上がった絵は「仏教伝来」と題し、秋の院展に出品した。新聞の展覧会評の記事の中で、この絵が取り上げられているのを見た。うれしくて何度も何度も読み返した。」

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