飽食の墓場

所蔵番号HK2204a
作品名飽食の墓場
作者星先こずえ
主題課題「ごみと環境問題:食品ロスと食品廃棄」
解説飢えた男がいる。元は良い暮らしをしていたらしく、眼鏡と腕時計をつけてはいるが彼の苦しみを和らげるまでには至らない。手足は痩せ細り、腹だけが膨れている痛々しい姿で男は恨み言を吐いている。どうしてここには食べ物が無いのか。己が座っている下にまだ瑞々しいハンバーガーがあるとも知らずに。しかしそのハンバーガーには立派な蝿が張り付いていているので「ゴミ」にされてしまっていた。彼を見て「餓鬼」を連想する人もいるかもしれない。悪口の意味ではなく元は仏教で使われる言葉で、生前に食べ物を粗末にした人が死んだ後で罰を受けた姿が餓鬼だ。いくら食べても腹が満たされない、もしくは食べようとしても触れられず飢えたままで罰を受けるのだ。作中の男もハンバーガーを尻に敷くように食べ物を粗雑に扱い、食の墓場まで堕ちた姿なのだろう。しかし彼の末路を他人事だと受け取ってはいけない。現在、人々はいずれ訪れる食料危機を恐れながらも世界中で生産されている食料の三分の一を廃棄している。それには様々な理由があるが中でも飽食、贅沢な暮らしに慣れきったが故の廃棄はなんとも痛ましく、勿体のないことである。男が人類の未来の姿にならないように、食べることについて真摯に考えて欲しい。
寸法W285mm×H410mm
展示場所収蔵庫
制作年代2022年4月

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