狐と葡萄(ラ・フォンテーヌ寓話)

作品名 よみきつねとぶどう
TitleThe Fox and the Grape (from Fables of La Fontaine)
作家/ Artist長谷川潔 HASEGAWA Kiyoshi
制作年昭和38年
Date1963
寸法/ Size(cm)45.4×26.4
技法・材質メゾチント・紙
MediumMezzotint on paper
分類版画
ClassificationPrints
作品番号/ Accession NumberPRZ0819000
作品解説ビロードのように深く柔らかな「黒」から、ほのかにそして徐々にくっきりと浮かび上がってくる「白」。そこに描かれるのは、古い記憶から染み出してきたかのような捉えがたく、それでいて不思議なほどはっきりとしたイメージ。この作品は、日本近代版画の巨匠、長谷川潔の円熟期の代表作である。
メゾチントはフランスではマニエル・ノワール(黒の技法)と呼ばれ、20世紀初頭、長谷川がパリに渡った当時、すでに廃れようとしていた版画技法であった。ヨーロッパに渡って初めてこの技法と出会った彼は、苦心の末に自己流の手法を生み出し、近代的な技法としてこれを復活させる。エッチングによる銅版画が、白い画面に黒い線や面を描き出していくのに対して、メゾチントはビロードのような黒い背景からさまざまな階調の白を生み出していく、まさに「黒の技法」である。長谷川は銅版画の中でも特に習熟した技量を要求されるこの技法を用いながらも技におぼれることなく、その作品を精神的な世界にまで高めた。色彩を否定し、白と黒が創り出すその不思議な空間には、パリに学び、パリでその生涯を過ごしながらも変わることのなかった彼の中の「東洋」がある。

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