木村素衞・高山岩男宛

IDE-103
和暦昭和13年02月10日
差出人西田幾多郎
宛先木村素衞・高山岩男
西暦1938/02/10
新版全集の書簡番号2683
内容京都市、上京区小松原北町五八 木村素衞様
二月十日 かまくら 西田幾多郎 〔消印11日〕

 御手紙難有う いろ●≪ゝの逆で長い≫お骨折下され、特にシ氏の御努力感謝に堪へませぬ どうか厚く御礼御伝言下さいませ
 御返事は木村君の方へ一緒にしましたが後で一寸思ひ出しましたがゲーテの詩の中にたしか(ファウストでもあつたか、今思ひ出ないが)……gelebt und geliebt〔生き、愛した〕といふ様な句があつたと思ふ(シ氏は多分この句知らるゝならん) 多情多恨と云つた時或はそんな語が私の頭にあつたのでもあらう
 一層その語を用ゐて見てはいかゞ シンチンゲル氏に相談して見て下さい 例へば Goethe, der sein langes Leben von 80 Jahren gelebt und geliebt〔八十年の長い生涯を生き、愛したゲーテ〕≪gelebt und geliebtに下線≫? そんな風いかゞ 無論これはドイツ人にて文章としていかゞ感せられるか 一にシ氏の考に従ひたいとおもふ
 前後の関係もあり必ず私の考に拘泥せない様、この語はあの文の中に巳に用ゐて居るかも知らず 前後の関係なとも考へ下さい
   二月十日     西田
  高山君
  木村君

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木村素衞・高山岩男、両氏宛
論文「ゲーテの背景」のドイツ語訳の相談か。昭和12(1937)年12月17日に、ロベルト・シンチンガー、木村、高山が西田を来訪している。

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