片岡我堂の頼兼(東京府)

法量(幅)㎜504
法量(高さ)㎜358
公開解説 明治13年(1880)9月に久松座で幕を開けた「阿国久松戯場魁」は伊達騒動を題材にした演目で、押絵には三代目片岡我童演じる足利頼兼が描かれている。頼兼は、奥州五十四郡の太守という設定で、遊女・高尾を深く愛し大金を積んで身請けする。三股川で大船に乗り込んだ高尾は、もとの恋人への思いを断ち切れず、頼兼になびこうとしない。怒った頼兼は酒乱の果てに、高尾を船べりに吊るして惨殺してしまう。押絵に描かれたのはこの「高尾の吊斬り」の場面だろう。兼頼は右手に刀、左手に髪の毛を握り、怒りに満ちた面持ちである。
 高尾は実在の人物で、頼兼のモデルとなった仙台藩三代藩主伊達綱宗が足繁く通ったことから、「仙台高尾」と呼ばれた。はめ込み絵は、押絵を制作した勝文斎自身が、浅草寺の駒形堂を描いたものであり、高尾が綱宗に詠んだとされる句「君は今駒かた(形)辺り廓公」が添えられている。

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