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月光の下、平和を語る

タイトル(よみ)げっこうのした、へいわをかたる
作品名(原題)Shared Peace in the Moonlit Landscape
作家周邦玲 Chou Pang-Ling
制作年1993年
寸法39.0×30.0×20.0cm
員数1
解説 台湾では、1967年国立歴史博物館で「呉譲農陶芸展」が開催された。この展覧会は美術館において開催された陶芸家の個展としては初めてのものであり、個人制作の陶芸家が認知された展覧会である。その後、台湾陶芸は伝統的な陶芸制作と、造形的陶芸制作の大きなふたつの流れを持ち発展してきた。そのなかでも1981年に開催された「中日現代陶芸家作品展」(吉田耕三選)が刺激となって、その後の台湾陶芸界の発展に大きく寄与したとされている。
 80年代には日本や欧米留学から帰国した者が中心となって活躍するが、周邦令もそのひとりである。
 周はドラマ制作を本格的に学ぶため渡米、ジョージア大学大学院で学ぶ。その後陶芸を専攻し、小ぶりながらも人間模様が繰り広げられるドラマのセットのような作品を制作する。
 本作品は月世界の風景が写しだされている。中国神話では月に見られる黒い影は下界でいじめられた嫁が月に助けられて平和に暮らしている姿とされている。穏やかな平和であるその風景は、経済発展のため住み難くなった社会、自己を見失つつある人達へのアンチテーゼであり、周の平和への願いと批判の両方が交差している。やさしくも冷ややかな眼差しで、台湾の急激な近代化による歪みを米国生活で第3者的に感じたのか、周は中国神話など固有の伝統思想をもって問いかける。

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