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頽廃の聖書

タイトル(よみ)たいはいのせいしょ
作家荒木高子 あらき たかこ
制作年1985年
寸法16.0×24.0×20.0cm
員数1
解説 荒木高子は、1921年華道未生流宗家の次女として西宮市に生まれた。1936年西宮市立高等女学校を病気中退後、家業に従事し家元代行を務めながらガラスオブジェや絵画の制作を始める。61年には渡米し、帰国後1963年、自宅に築窯し作陶を始める。黒陶のオブジェやシルクスクリーンによる転写を取り入れた作品などを経て、荒木は陶芸の素材と技法について原点からの検証を試みる。まず砂(シャモット)の上に釉薬を流して焼成し「砂の皿」を創るところから始め、「砂の楽譜」、そして1979年の「聖書シリーズ」へと到達した荒木は、陶芸界のみならず広く美術界の注目を集める。 本作品は、聖書シリーズが様々なヴァリエーションで展開する80年代の作品である。磁土を延ばして1頁ずつ成形し、本の形に一旦組んで焼成。さらに1頁ずつ水金を塗布し文字を転写し、再び本の形にして焼成しフォルムを固定する。念入りな成形と施釉そして焼成の繰り返しの末に、死と再生のイメージが焙り出されている。
 荒木は「人間の内奥に存在する魂(霊魂ではない)というか、Somethingあるいは感受性そのもの」の象徴として聖書を扱い、陶磁の可能性を極限まで押し広げた表現によって現代を問うている。

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