黒釉鉢

タイトル(よみ)こくゆうばち
作家八木明 Yagi Akira
制作年2000年
寸法16.0×35.6×35.6cm
解説 八木明は鈴木治・山田光とともに前衛的陶芸家集団・走泥社を結成して日本の現代陶芸を知らしめた八木一夫の長男として生まれた。祖父の一艸(いっそう)から三代続く陶芸家の家に生まれ、幼い頃より身近に土に触れていたが「手の痕跡が残って、動きがどんどん行ってしまう」ことに違和感を覚え、自分のイメージしたものがそのまま形になる素材として、磁器を選び、青白磁を選ぶ。
 訓練校卒業以後、父八木一夫に師事する。青白磁の制作を専ら手がけてきた。本作品のように、触ると手を切ってしまいそうな不定形な口縁を特徴とする器がある。そこには八木の器の口に対する意識、すなわち口の形状が空間に対して、いかに豊かにそのイメージを広げられるかというテーマが示されている。そしてそのテーマは、周囲の空間に溶け込む感じを持ちながらも、「ものの末端の力を見せる」という緊張感あるイメージで形象化される。結果、この口縁は青白磁の淡い色と相まって空気との境界線を曖昧にする。
 しかし一方では本作品のように、きっちりとした形をみせる作品も手がける。胎はきわめて薄く、その完成された精緻な形はすみずみまで緊張感に溢れている。その完全な形に、祖父一艸の代より受け継ぐ黒釉を施した。八木はこの黒釉を漆黒釉とも呼ぶ。しかし、一艸の時代には薪窯を使用していたこともあり、八木はこの黒釉をガス窯仕様にあわせて調合を研究し、自分の釉薬をつくりだした。八木の磁器を選んだ形への意識が、口縁にいたる隅々までの緊張感によくあらわれた作品となっている。

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