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浮彫蓮子白鷺翡翠図花瓶

タイトル(よみ)うきぼりれんづしらさぎかわせみずかびん
作家宮川香山 Miyagawa Kozan
制作年明治前期(19C後半)
寸法51.0×26.4×26.4cm
員数1
解説 初代香山は天保13年(1842)京都粟田口の陶家に生まれた。本名虎之助。出身地の京都真葛ヶ原にちなんで「真葛香山」と号した。万延元年(1860)に家業を継ぐが、輸出用陶磁器の制作注文を受けたのを契機とし、明治3年(1870)には開国後まもない横浜に陶器工場を設立した。初期には薩摩風の錦手や精緻な細工の作品を手がけ、業を二代に譲った明治15年(1882)頃からは磁器の焼成と、青磁釉、黄、茶などの色釉の研究に力を注いだ。
 その作品は数々の万国博覧会で高い評価を受け、香山は明治29年(1896)に陶芸界で二人目の帝室技芸員となっている。
 香山は初期には本作品のような、陶器にリアルな浮彫りや造形物を貼付けた作品を制作した。その作品が醸し出す独特の世界は、欧米人たちの好みをよく研究したものと思われ、海外で大好評を博した。
 本作品は蓮池にたたずむ鷺、そして花に戯れる翡翠(かわせみ)をモチーフとしている。虫食いの穴までも克明に見せる枯蓮の表現は実に見事であり、細部まで隙のない作品となっている。そしてその装飾は貼付けによるだけでなく、釉下に描いた染付に始まり、さらには上絵としての金彩が施されるほどに手間がかけられたものである。結果、幾度もの焼成を経ながらこの作品は完成していることになる。海外向けの産業製品でありながら、香山の極めて優れた技術と確たる芸術的な感性が本作品には表れている。

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