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無題 (99J)

タイトル(よみ)むだい (99J)
作家北村純子 Kitamura Junko
制作年1999年
寸法59.0×34.5×34.5cm
員数1
解説 北村は1985年以来、一貫して器物としての造形と印花文による加飾による自己表現を追究してきた作家ある。1992年には「主張する自己」を文様に託し作品に結実させた。その後、作家の意識と共に手法も変貌を遂げ、特に1998年のニューヨークでの個展における極めて精緻で洗練された作品群の発表を以て新機軸を確立した。
 本作品は北村の新境地を体現する一作である。従来の印花の手法に依りながら、素材・形態・文様の高次の統合が成し遂げられている。模様を際だたせることに注がれてきた作家の意識に変化が生じ、1997年頃より北村は「模様が前に出ないように、むしろ印がある"と"ない"の差をみせる」ことによって、存在を現そうとする方向に向かい始めた。その意識の変化にともなって手法も変容している。信楽の赤土に化粧土を混ぜることによって地の土自体が黒くなり、黒化粧も従来の4度から2度がけとなり薄くなった。底部に近くなるほど化粧土が薄くなり、素地の土の地色が露わになっている。あくまでも器としての形態をとる姿勢が貫かれているが、口の存在自体、文様と器形の総体に融合している。従来の作品では際だっていた黒色も、還元焼成により艶消しにされ控えられている。元々上薬を使わず土の感触を尊重してきた北村であるが、本作品においてはさらに作家自身の陶に対する美意識を徹底させている。

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