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無題 (92M)

タイトル(よみ)むだい(92M)
作家北村純子 Kitamura Junko
制作年1992年
寸法35.6×39.5×39.5cm
員数1
解説 北村純子は、器物としての造形に伝統的な可飾法のひとつである印花を用いて現代的表現を拓いた作家である。
 北村は陶芸を始めて程なく、単純な単位の繰り返しによる模様の創出に取り組むようになり、イッチン、象眼、貼付などの手法を経て、1985年に印花によるモノクロームの世界が最も端的に自己を表出できるという認識に至ったという。
 本作品は、専ら印花の手法に取り組んで7年を経て獲得した、北村の陶表現の原点に位置するものである。微妙な起伏によって際だつ「口」は、無限の造形の中から「器」としての形態を選択している北村の造形意志を表し、酸化焼成による艶のある黒は、凹凸と共に生起する白と黒の対比的表現へのこだわりを示す。また模様は、単純な平行四辺形を最小単位とする有機的集合体がダイナミックに渦巻く流れとなってあらわれ、「自己の拡大」という当時の北村の志向をよく示している。「あらかじめ模様を想定せず、最小単位の印を押す行為の連続のなかで全体が立ち現れてくるのを待つ」という制作方法を明確に意識するのもこの時期である。 
 本作品は、陶芸における形と文様についての北村の認識を明確に表明した一作である。

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