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タイトル(よみ)つぼ
作家加守田章二 Kamoda Shoji
制作年1980年
寸法42.6×23.5×14.8cm
員数1
解説 加守田章二の生涯は49年間という短いものであったが、その二十数年間の制作活動のなかで、旺盛な制作意欲は多彩な作風となって現れ、独創的魅力に満ちた仕事の数々を残した。60年代半ばにかけて完成した須恵器風灰釉作品に続き、土器風本焼作品や銀彩陶器が制作されるようになる。この土器風本焼作品により加守田は陶芸界で初めて高村光太郎賞を受賞。その後も曲線彫文、彩陶、彩釉へと作風を展開していく。このような加守田の仕事は、彼の師事した富本憲吉が提唱する創作的な陶芸の教えを受け継ぐものであり、多様な変貌を重ねながら、彼独自の陶芸を出現させてきた。昭和45年(1970)の個展で、岩手県遠野を新たな制作地とする曲線彫文を発表して以降、毎年数回催した個展で新しい意匠の展開を見せた。それは技術及び創意において新たな表現の連続だった。加守田は昭和57年(1982)まで制作を続けているが、実質的な意味では、病に蝕まれはじめた昭和55年(1980)の作品が最晩年のものとなる。その年の高島屋での個展では器胎を朱色の線で区切り、黒、藍、白、緑の菱形文様で覆う半磁器の作品が発表された。この菱形文様の作品は加守田の本格的な磁器制作への志向を示し、一層の展開を感じさせるものであった。
 本作品はこの最晩年の時期の作品にあたる。陶芸における真の創作というものを追求し続けた加守田の、さらなる可能性を内包し、伝え残す作品といえよう。

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