苦闘する形態

タイトル(よみ)くとうするけいたい
作家中島晴美 Nakashima Harumi
制作年1995年
員数1
解説岐阜県恵那市に生まれた中島晴美は、1973年に大阪芸術大学デザイン科陶芸専攻を卒業した後、信楽にある製陶会社に勤務した。しかし、熊倉順吉の勧めもあり、多治見市陶磁器意匠研究所の職員となった。故郷である美濃地域で、作家として着実に実績を重ねていきながら、後進指導の面でも大きな評価を得ていった。
 1995年、第4回国際陶磁器展美濃陶芸部門において金賞を受賞した本作品は、中島の代表的なシリーズのひとつである《苦闘する形態》のひとつである。「悶えるようにウニウニとねじれながら登っていく感じ」「地をヌタヌタと這いつくばっていく感じ」「ポヨンポヨンと揺れながら闇に向かってゆく感じ」といった《苦闘する形態》シリーズの表現をこのシリーズの「言葉のエスキース」とする評がある(奥野憲一による)。なるほど、工芸は、対話など、素材との密接な関係から作品が形成されていくことを鑑みると、適当な賛辞であるといえる。球形の土の塊は、進むべき方向を模索しながら天上目指して伸びてゆく。素地に施されたブルーの水玉模様は、伸びゆく土の生命感を際立たせている。「私の原点は、あの手の中でグニュッとする土の魅力であり、やきもの独特の質感であったはず」という中島は、陶芸だからこそ可能な形態を追求しつづけるのである。

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