陶筒 鳥雲に入る

タイトル(よみ)とうつつ とりくもにいる
作家八木一夫 Yagi Kazuo
制作年1968年
寸法52.5×11.0×11.0
員数1
解説1918年陶芸家八木一艸の長男として京都市馬町に生まれた八木一夫は、京都市立美術工芸学校彫刻科卒業後、青年作陶家集団創立に参加する。1948年に同会が解散した後、鈴木治、山田光らと走泥社を結成した彼は、戦後日本の陶芸界において前衛陶芸のパイオニアとしての役割を果たした。初期は、西洋近代絵画への強い関心から、近代絵画の特質を取り入れた器物の制作に取り組むが、次第に抽象形体へと移行し、ついには陶磁器の実用性を否定したオブジェの制作に至る。
1954年の個展出品作「ザムザ氏の散歩」は、オブジェとして自律した最初の陶芸作品としてよく知られる。1960年代にはいわゆる皺寄手による特異な有機的表情を持つ作品群を生み出し、さらに1970年代には、具体的な事物をモチーフとし、黒陶による透徹たる造形表現に到達する。
本作品は、1960年代末から70年代初めにかけての過渡的時期に制作されたものである。この時代の八木は、黒陶によるアイロニーに満ちた造形表現と同時に、白化粧に鉄絵の絵壺や信楽の灰かぶりといった器物に回帰している。鉄絵により自らの観念の世界を描き、手捻りで積み上げて出来る「筒」のかたちを再認識しようとするかのような営みであったともいえるだろう。この時期の八木は、彼が熟知していながらあえて退けてきた伝統的規範に再び淡々と向き合っている。八木の実像に迫る上でも極めて重要な意味をもつ作品である。

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