乳狼吼月

TitleDam Wolf Howling at the Moon
作家名橋本雅邦 HASHIMOTO Gaho
技法・素材墨、絹
circac.
制作年1899
制作年(和)明治32
制作年(推定) 
寸法縦(cm)158.00
寸法横(cm)84.00
作品・作家解説橋本雅邦[はしもと・がほう]
1899(明治32)年頃 水墨、絹、軸 158.0×84.0cm

画題から月に向かってほえる狼が、授乳期にあることがわかります。狼の荒々しい表情と丹念に描かれた、逆立つ毛並みの具合から、さえざえとした月夜の晩に子を守ろうとする親の狼の警戒心と緊張感が伝わってきます。この作品は、東京美術学校の騒動の引き金になった岡倉天心の退陣に伴い、雅邦をはじめとする弟子たちがそろってその教職から退く決意をした頃のものです。ほぼ墨一色の濃淡だけで構成された画面ですが、形を重んじるよりも、心持ちを表現することを重視した雅邦の気迫のこもった筆触が印象的です。そこからは狼の震えるように緊迫した感情ばかりでなく、まさに危機的な状況下に置かれていた日本画壇の情況を憂える気持ちが同時に伝わってくるようです。

橋本雅邦[はしもと・がほう]1835(天保6/東京都中央区)―1908(明治41/東京都文京区)
父の橋本養邦(おさくに)から絵を習い、12歳から木挽町(こびきちょう)の狩野勝川院雅信(しょうせんいんただのぶ)に学ぶ。同門の狩野芳崖(ほうがい)とともにフェノロサ、岡倉天心の指導を受ける。日本の伝統美術の研究の上に、西洋画の技法も取り入れた優れた作品を残し、横山大観、菱田春草らの後進の指導にも尽力した。

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