650ワットと60ワット

Title650 watts and 60 watts
作家名吉田克朗 YOSHIDA Katsuro
技法・素材インスタレーション
制作年1970
制作年(和)昭和45
作品・作家解説吉田克朗[よしだ・かつろう]
1970(昭和45)年 コード、電球 可変サイズ

1960年代末、自然物や工業製品など、ありふれた物を用いる美術家があらわれ、後にもの派と称されるようになりました。彼らの作品は、物に対する既成概念をふりはらい、物の生々しい姿をあらわにすることに貢献しました。吉田もこうした傾向を代表する作家の一人ですが、この作品では、物を取り巻く状態や状況の提示が重視されています。天井から吊るされたコードが中空で二又にわかれ、一方は重力に従って宙吊りの状態で、他方は床にとぐろを巻いた状態で、それぞれ電球に接続されています。コードに電気が流れている状態を即物的にみせること、明るさの異なる電球を対比的にみせること、そして、天井から床までの空間全体を意識させることが意図されています。このように、ありふれた物を用いて日常世界のありのままの姿を意識させる手法は、今日に至るまで、現代の美術の一つの重要な潮流となっています。

吉田克朗[よしだ・かつろう] 1943(昭和18)―1999(平成11)
1968年多摩美術大学絵画科卒業。在学中は斎藤義重に指導を受ける。60年代末から、物体の素材や状態に着眼した作品を精力的に発表する一方、風景を投影した写真を素材に版画制作も行う。71年には筆触を取り入れた表現へ移行し、同年第7回パリ青年ビエンナーレに参加。80年代半ばから、黒鉛の粉末を手でこすり付け有機的形象を描く絵画シリーズ「触」を手がけた。

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