(資料群)水野家 資料

資料群・作家名(ヨミ)みずのけしりょう

略歴・解説

本資料群は、寄贈者が香川民俗学会会員として県内各地を採訪・調査する過程で蒐集されたもので、県内の各社寺が出す苗代の水口祭りのお札を主としたコレクションである。昭和40年代半ば以降急速に田植機が普及する中で、旧来の苗代づくりは姿を消し、お花や焼き米を供える水口祭りも、めっきり少なくなったものの、神社などからお札を出す地域では田植機用のプラスチック箱を並べた苗床にお札を立てているところも若干見られる。『西讃府志』(安政5年)には、「春稲種ヲ下ス時水口祭トテ苗代ノ水ロニ保食神ノ璽ヲ立、蒔余餘リタル籾ヲ熬リ、ハタキテ供フ、是ヲ棚焼米卜云、ソノ餘リハ親キ家二贈リナドモスルナリ、又此日正月二飾リタル門松ヲ蓄へ置テ雑炊ヲ煮ル家モアリ」とあり、その習俗の江戸時代までさかのぼることがわかる。県内においても、水口祭りの多様な習俗については『香川叢書民俗篇』(香川県教育委員会:昭和57年)に紹介されているものの、今回の蒐集調査によって、新たにこれらお札の名称と形態の分布等に地域性のあることが明らかにされたことは意義深い。具体的には、綾川町ではゴーノミサン、それ以東ではゴーサン、それ以西ではマツトメサン・マツトミサンと呼ぶこと。また必ずしも名称分布と形態分布に整合性があるわけではないが、主として高松市・三木町以西の県域全体にいわゆる先の尖った剣先形が分布し、高松市国分寺町・綾川町以東に逆剣先形又は逆台形のものが多いことが明らかにされた。高松市・三木町から綾歌郡東部にかけては、その両者が混在又は並立しているとのことであるが、今後その名称と形態・習俗との関係について氏の研究成果に期待するところ大であり、また木版刷のものも含めた関係資料がまとまって収蔵されたことは、たいへん意義深い。その他、戦時中の弾除札や百々手祭に関わる矢や的なども時代や地域を象徴する資料の一つであり貴重である。
(香川県教育委員会『歴史博物館整備に伴う収蔵資料目録 平成7年度』より、一部修正し転載)

この資料群・作家の収蔵品一覧[全42件]

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