テキスト内容 | 広大な海を意味する。万葉集に22例。一字一音の例「宇奈波良」(20-4399)から、清音で訓まれていたことがわかる。また、防人歌に「うのはら」(20-4328)の訓みが一例ある。神代記には三貴子を成した伊耶那伎命(いざなぎのみこと)が、それぞれが統治する国を定めた際に、須佐之男命(しさのをのみこと)に「汝(な)が命は、海原を知らせ」として、海の統治を命じたことがみえる。万葉集の舒明天皇国見歌に、「とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立つち立つ 海原は かまめ立ち立つ」(1-2)と詠われる。天皇の国見歌において、国原と海原が対照され、これが国見の対象となっていることには、海原は天皇が統治すべき国土の一部と考えられていたことがわかる。また、「家島(いへしま)は 名にこそありけれ 海原を 我が恋ひ来つる妹もあらなくに」(15-3718)「うなはらに 霞たなびき 鶴が音の 悲しき夕(よひ)は 国辺(くにへ)し思ほゆ」(20-4399)など、旅にでて、遥かにたどった道のりを思い、家や妻を思いやる歌にみられるのも、「神の渡り」(13-3335、3339)や「わたつみの神の宮」(9-1740)といった海の神のいます世界を「命も知らず 海原の 畏き道を 島伝ひ い漕ぎ渡りて」(20-4408)越えてきたという感慨がこめられているからであろう。 |
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