テキスト内容 | 子ども。特に成人前の子。束ねずに垂らしたままの髪型に由来する語。万葉集には「今更に 童(わらは)(小童)言(ごと)する 老人(おいひと)にして」(11-2582)、「老人(おいひと)も 女童)をみなわらは)(童児)も 然願う」(18-4094)など、老人と対比する例が見られるものの、その定義は明確でないが、『和名抄』には、「禮記云 童《徒紅反 和名 和良波》未冠之称也」とあり、特に成人前の子を指すことがわかる。常陸国風土記には「古、有年少童子。《俗云加味乃乎止古、加味乃乎止売》」のごとく、特に神に仕える男女を「童子」と記す例が見られる。このように、「童」には、「子」や「神に仕える男女」の意味を示す例がある一方で、蘇我蝦夷親子の宮門に警護として仕える氏族らを「おやのこわらは(祖子孺者)」と表現した例もある(皇極紀)。このように未成年者に限らず、奉仕者や従属者を広く意味するのが「わらは」本来の用法であったという(義江明子「古代共同体の「人」「子」」『日本社会の変革と再生』弘文堂)。万葉集に見られる「この岡に草刈る童(わらは)(小子)な然刈りそね」(7-1291)や「童(わらは)(小児)等草はな刈りそ」(16-3842)などの表現はそうした用法を示すものといえる。 |
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