テキスト内容 | 早く開花し実る稲の田。早稲田。サは稲または田神、稲霊。7-1353は「石(いそ)の上布留(かみふる)の早稲田」とあり、奈良・石上神宮付近の神田のことをさすため、お田植神事との関連が指摘できる。現在の石上神宮のお田植神事は、6月の神剣渡御祭(でんでん祭)にて行われる。お田植神事は、子孫繁栄と五穀豊穣の予祝儀礼であり、悪疫退散を意図したもの。田の神と早乙女の神婚儀礼でもあり、田植神楽などがある。奈良県高市郡の飛鳥川上流で行われる綱掛神事では、雄綱・雌綱から神婚儀礼の象徴的な役割を垣間見ることができる。早稲は、最初の収穫米として初嘗神事の際に用いられる(14-3386)。早稲の初穂による収穫儀礼では、早稲を神に供えた後、その米を焼米にして共食する民俗が各地に存在していたことが窺える(14-3386、10-2117)。常陸国風土記に新粟の初嘗の記載がある(筑波郡)。伊勢神宮の神嘗祭では、諸国から奉った早稲の走穂(はつほ)を大神に奉る。これは諸国の稲(=魂)が宮廷および宮廷の神に服従を誓うタマフリである。7-1353の早稲田は女を比喩。また早稲田に恋する相手を見、また恋心を投影するものとして、8-1624等がある。秋を呼び出すと同時に、農耕社会における聖なる稲作への意識が窺える。 |
---|