テキスト内容 | 竜王山、穴師山、巻向山の説があり、「巻向山・三輪山ノ北ニアリ、峯ヲ弓月岳ト称シ長谷山二連ル」(大和志料)とある。「巻向の斎槻が岳」(7-1087)とあることから、巻向山の峰の一つと考えられる。斎槻が岳、由槻が岳とも。川の豊かさと、そこに湧き立つ雲の様子と共に描かれていることから、この地での豊作を予祝する農耕儀礼としての国見歌との見方もある。また、「雲居立てるらし」(7-1087)や「雲立ちわたる」(7-1088)の表現から、「あしひきの 山のたをりに この見ゆる 天(あま)の白雲 海神(わたつみ)の 沖つ宮邊に 立ち渡り との曇(ぐも)り合ひて 雨も賜はね」(18-4122)、「常世べに雲たちわたる水の江の浦嶋の子が言(こと)持ちわたる」(丹後国風土記)など、雲に雨賜の願いを伝え、また嶋子の言を持ち運ぶ霊力があるという古代信仰が指摘され、神祭りと関係の深い聖水の信仰を深くこめている泉の山と解釈される。ユ(斎)は、清らかな、神聖な、の意。「斎槻」とは、神聖な樹木としての槻の木をめぐる、水と農耕の儀礼と不可分に結びついた観念か。奈良県桜井市の穴師坐兵主(あなしにいますひょうず)神社の左社・大兵主神は、元は弓月が嶽に祀られたとある。 |
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