テキスト内容 | 意味は「ゆふけ」に同じ。上代の用例としては、「玉桙の 道に出で立ち 夕占を(夕卜乎) 我が問ひしかば 夕占の(夕卜之) 我に告らく」(13-3318)の1首2例あるのみ。この「夕卜」の文字列は、万葉集中に他に、「ゆふけにも(夕卜尓毛) 占にも告れる 今夜だに 来まさぬ君を いつとか待たむ」(11-2613)、「逢はなくに ゆふけをとふと(夕卜乎問常) 幣に置くに 我が衣手は またそ継ぐべき」(11-2625)の2例を見ることができ、どちらも「ゆふけ」と訓むのが通説となっている。上掲13-3318は、長歌の5音句中にある5文字にあわせるため、「ゆふうらを」「ゆふうらの」と訓まれてきたのであろう。しかし、長歌の5音句は単独母音を含むと字余りを起こすのが通例である。当該例についていえば、「ゆふうら」と訓んでも単独母音「う」を含む準不足音句となり、「ゆふけ」と「ゆふうら」との間に字余り法則から見た時の差異はなくなる。さらに、「うら」に上接するものは、「足占」(4-736、12-3006)、「石占」(3-420)、「道行占」(11-2507)、「水占」(17-4028)などがあり、「うら」の方法を示すものはあっても、「うら」の時間帯を指定するものはなく、「ゆふうら」の確例も上代には見出すことができない。あるいは、「ゆふうら」ということばそのものが、長い万葉集訓読の歴史の中に産み出された仮想的な上代語であるのかもしれない。それほど、「ゆふけ」と「ゆふうら」との間には差が見られない。なお、上掲13-3318は、歌の一部が占者の発話となっている貴重な例である。→<a href=http://k-amc.kokugakuin.ac.jp/DM/detail.do?class_name=col_dsg&data_id=68956">ゆうけ〔夕卜・夕占〕</a> 和田萃「夕占と道饗祭」『日本古代の儀礼と祭祀・信仰 中』(塙書房)。 |
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