テキスト内容 | 津は、船の泊まるところ、船着き場をさす。神性を示すのは、「御」に係わる。「御」は、その物の所有者、関係者が、畏敬・尊敬すべき者であることが多い。その一つは神仏に関する物、また一つは天皇・皇族の物である。さらに、美称といわれる用法に、地形名と器物に関するものがあり、ともに神・信仰との関係が求められ、地形名の場合は、元来神の場所であったといわれる。万葉集には「いざ子ども早く日本へ大伴の三津の浜松待ち恋ひぬらむ」(1-63)とみえる。古く大伴氏の所領であったことから名付けられた大伴三津は、現在の大阪市から堺市にかけての総称で、浜は二カ所以上に比定される難波津の一つとされる。「大伴の 三津の浜辺」(5-894)とあり、第一反歌(5-895)に「大伴の三津の松原」とあり、第二反歌(5-896)に「難波津に 御船泊てぬ」とあって、「大伴の三津」と「難波津」と同じ場所かと考えられている。さらに「難波に下り 住吉の 三津に船乗り」(19-4245)とあって、難波津と住吉の三津と同じと考えられてもいる。とすれば、それは大伴の三津の浜とも同じ場所ということになる。住吉には住吉神社があり、神の居場所に違いない。神の居場所の津が御津である。 |
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