テキスト内容 | 東山道の道の奥の意。陸奥・陸中・陸前・岩代・磐城の五カ国の総称。みちのくは、都の人には、東国よりも、さらに遠い国で、実体の良く知られない地の果ての国であった。万葉集には、「陸奥の真野の草原遠けども面影にして見ゆといふものを」(3-396)と遠いところとして歌われている。みちのくで有名なのは安達太良真弓であった。「陸奥の安達太良真弓弦著けて」(7-1329)、「陸奥の安達太良真弓はじき置きて」(14-3437)とみえ、男女の関係に比喩的に用いられている。みちのくの人が作った歌には、14-3426、3427、3428、16-3807があるが、順に会津嶺、陸奥の香取娘子、安達太郎の嶺に伏す鹿猪、安積山が歌われている。恋歌の比喩や序のような用いられ方をしている。はかり知れない地の果てみちのくで奇跡がおこった。東大寺盧舎那仏の鍍金に使う金が不足していて聖武天皇が悩んでいたところ、天平21(749)年に陸奥から黄金が産出した。天皇は喜んで詔を下した。家持は、「陸奥に金を出だす詔書を賀す歌」を作った。そのなかに「天地の 神相うづなひ 皇祖の 御霊助けて」(18-4094)とある。天地の神の力によって陸奥だからこそ金が産出する奇跡が起こったのであった。 |
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