テキスト内容 | 狼のこととされるが、万葉集には飛鳥の地名として「真神の原」(「明日香の真神の原」・「大口の真神の原」)と3例(2-199・8-1636・13-3268)みられる。後者2首は「大口の」と枕詞を伴っている。高市皇子挽歌(2-199)で、天武天皇が真神の原に宮(飛鳥浄御原宮(あすかきよみはらのみや))を定めたとうたわれていること、崇峻紀元年の条に、法興(ほうこう)寺(飛鳥寺)を建立した地は「飛鳥の真神原」とあることから、「真神の原」は古代飛鳥の中心地であった奈良県明日香村の飛鳥寺付近に広がる野をさす。狼の例は、風土記・紀・『続日本紀』にもみられる。欽明即位前紀では、秦大津父(はたのおおつち)が2匹の狼が噛み合っているところに遭遇し、「あなた方は恐れ多い神(貴神)であるのに、荒々しい行いを好まれる。もし猟師に出会えば、たちまち捕まるでしょう」と言って助けた話があり、狼を神聖な存在として捉えている。ニホンオオカミは明治時代に絶滅したが、田畑を荒らす野獣を駆除するため、山の神、神の使いとして信仰された。現在でも秩父の三峯神社や福島県相馬郡の山津見神社など、各地に狼(山犬)を御眷属として崇める神社がある。 |
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