テキスト内容 | 枕詞。語義、かかり方未詳。万葉集に50例見られ、万葉仮名表記の6例を除くと「久堅」が29例、「久方」が15例で表記されていることから、悠久で確かなもの、久遠のものという意識で使われていたと考えられる。①天に掛かる枕詞。②雨に掛かる枕詞。③月に掛かる枕詞。④都に掛かる枕詞。①は天(あま・あめ)に掛かり、「ひさかたの天の原より」(3-379)、「ひさかたの天の河原に」(3-420)とあり、また、記の景行記の長歌謡に「ひさかたの天の香具山鋭喧にさ渡る鵠」と見られる。②は「天(あめ)」と同音の「雨」に掛かり、「ひさかたの雨の降る日を」(4-769)にみられる。③は「月」「月夜」に掛かり、「ひさかたの月は照りたり」(15-3672)、「ひさかたの月夜を清み」(8-1661)などがある。④は「都」に掛かるが、永遠に栄えるべきものとして都を讃美して掛かると考えられる。「ひさかたの都を置きて」(13-3252)と万葉集に1例ある。おそらく、「ひさかたの」は天なる遠い世界を指す語として生まれ、遠い世の神聖な神々の叙事詩をおこす言葉であったと思われる。「ひさかたの」とはじまれば、天なる神々の物語が聞き手の前に展開したのである。 |
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