テキスト内容 | 枕詞。ハシは梯子でハシダテは梯子を立てた状態。垂仁紀87年2月に、天皇は年老いたので神宝の管理をすることができないから大中姫にまかせようとしたが、自分は手弱女なので天神庫に登ることはできないといってことわった話があり、その時五十瓊敷命が神庫は高いといっても私が梯を立てようといった。それで、「天の神庫も樹梯(はしだて)のまにまに」ということわざができたとある。梯立は天に登る梯子であり、天の神庫はその梯子を用いて登るのである。当時の倉が高床式で、梯子をかけて上ることから「はしだて」の枕詞が生じた。「はしだて」は神の倉をあらわすのに成立した枕詞がもとである。記の仁徳条の歌謡に「梯立の倉山」とある。万葉集には「梯立の 倉椅山」、「梯立の 倉椅川」とある(7-1282、1283、1284)。また、万葉集には「能登国の歌三首」(16-3878、3879)に「梯立の 熊来のやらに」「梯立の 熊来酒屋に」とあり、「熊来」は能登の地名であるが、「熊」は「倉」の転と思われ、「はしだての」の枕詞が冠せられたのである。魔除けの樹枝は土地の境界となる場所や、道のに立てたことから、「隈」と同音の「熊来」にかかる。いずれも、「ハシを立てる」という呪的行為がもととなった枕詞である。 |
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