とりがなく

大分類万葉神事語辞典
分野分類 CB文学
文化財分類 CB学術データベース
資料形式 CBテキストデータベース
+項目名とりがなく;鶏が鳴く
+表記鶏が鳴く
TitleToriganaku
テキスト内容「東(あづま)」にかかる枕詞。万葉集に9例伝わるが、東国人の歌と考えられる東歌・防人歌には1例もない。年代がわかる最も古い用例は、柿本人麻呂の高市皇子尊殯宮挽歌(2-199)である。かかり方については次のような説がある。①鶏が鳴いて夜が明けるから。②鶏が鳴いて東方から明るくなるから。③鳥の鳴き声がアアと聞こえるから。④「鶏が鳴くぞやよ起きよ我(わ)が夫(つま)」という心から。⑤あづ(建築の部分の名)で鶏が時をつくるから。⑥東国の言葉が鶏のように聞こえたから、などの諸説がある。この枕詞と「東」を考えるのに想起されるのは、記紀の天の岩戸神話の長鳴鳥である。石田英一郎は、この神話の基本的モチ-フが北太平洋に沿ったアジア・アメリカ両大陸をはじめ、東南アジアの諸民族までおよぶとし、鶏の鳴き声が大きな役割を演ずるのは東南アジアに特徴的な大陽呼び出しの説話要素と関係があるとする。櫻井満は、こうした文化人類学の成果に加え日本の民間伝承における鳥と太陽信仰についての事例を検討して、「鶏が鳴く」という枕詞は鶏鳴による大陽復活の祭儀における呪詞に発したものとする。加えて、これが東国人の歌に1例もないということから、大和びとの東方憧憬の心に育まれたものと説く。人麻呂によって登場する枕詞は多いが、「鶏が鳴く」が「東」にかかるという発想は櫻井が説くように大陽復活の祭儀における呪詞として育まれ、それを人麻呂がはじめて歌語として用いたということなのであろう。石田英一郎「隠された大陽―太平洋をめぐる天岩戸神話―」『全集6』(筑摩書房)。櫻井満「鶏が鳴く あづま」『著作集1』(おうふう)。
+執筆者大石泰夫
-68759402009/07/06hoshino.seiji00DSG000585とりがなく;鶏が鳴くToriganaku「東(あづま)」にかかる枕詞。万葉集に9例伝わるが、東国人の歌と考えられる東歌・防人歌には1例もない。年代がわかる最も古い用例は、柿本人麻呂の高市皇子尊殯宮挽歌(2-199)である。かかり方については次のような説がある。①鶏が鳴いて夜が明けるから。②鶏が鳴いて東方から明るくなるから。③鳥の鳴き声がアアと聞こえるから。④「鶏が鳴くぞやよ起きよ我(わ)が夫(つま)」という心から。⑤あづ(建築の部分の名)で鶏が時をつくるから。⑥東国の言葉が鶏のように聞こえたから、などの諸説がある。この枕詞と「東」を考えるのに想起されるのは、記紀の天の岩戸神話の長鳴鳥である。石田英一郎は、この神話の基本的モチ-フが北太平洋に沿ったアジア・アメリカ両大陸をはじめ、東南アジアの諸民族までおよぶとし、鶏の鳴き声が大きな役割を演ずるのは東南アジアに特徴的な大陽呼び出しの説話要素と関係があるとする。櫻井満は、こうした文化人類学の成果に加え日本の民間伝承における鳥と太陽信仰についての事例を検討して、「鶏が鳴く」という枕詞は鶏鳴による大陽復活の祭儀における呪詞に発したものとする。加えて、これが東国人の歌に1例もないということから、大和びとの東方憧憬の心に育まれたものと説く。人麻呂によって登場する枕詞は多いが、「鶏が鳴く」が「東」にかかるという発想は櫻井が説くように大陽復活の祭儀における呪詞として育まれ、それを人麻呂がはじめて歌語として用いたということなのであろう。石田英一郎「隠された大陽―太平洋をめぐる天岩戸神話―」『全集6』(筑摩書房)。櫻井満「鶏が鳴く あづま」『著作集1』(おうふう)。
586とりがなく鶏が鳴く大石泰夫と1
資料ID32195

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