テキスト内容 | ①地名。奈良県桜井市の東南部にある鳥見山とも、宇陀郡榛原町西峠北方の鳥見山かともされる。②トミは「跡見」で狩の際に獣の足跡をみて、大小や頭数を判断し、それを追ったり、うかがったりする者をいうことから、そうした者の居る山をいう。①は、神武紀4年に鳥見の山で、皇祖霊祭祀・天神祭祀のために祭壇が設けられたという記述から、辰巳正明は鳥見の山を祭儀の山として位置づけている。②に関しては、万葉集には「野の上には 跡見据ゑ置きて み山には 射目立て渡し」(6-926)て、狩に出る様を詠った歌がある。転じて、そうした狩場の山野を総じて跡見山と称したとも解することができる。一般名詞から特定の山を指す固有名詞と化したともいえる。「うかねらふ跡見山雪のいちしろく恋ひば妹が名人知らむかも」(10-2346)と、跡見山の雪の如くはっきりと恋したら恋人の名が知れてしまうことを恐れる歌があるが、これも、跡見が自らの恋を見きわめてしまうといった跡見の「見る」事に対する恐れが歌の背後にある。ここでの跡見は、超人的な「見る」存在としてクローズアップされていると考えられる。辰巳正明「東アジア王制をめぐる天皇の祭祀と神道」『折口信夫 東アジア文化と日本文学の成立』(笠間書院)。 |
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