テキスト内容 | 国名。長崎県の対馬。記の国生み神話に「次に、津島を生みき。亦の名は、天之狭手依比売と謂ふ。」とあり伊耶那岐命と伊耶那美命二神が生んだ島であると伝えられる。また紀の本書には「対馬島」と見え、海水の水沫によりできた島であるとする。『新編』は「水の泡からすべての生物・人・神が生じたとする神話は、内陸アジアの蒙古語族にも伝わる」と指摘し、アジアに広がる創世神話の類型の一つであるとする。また万葉集には対馬が西道海遠国の一つで従来日韓交通の要所であることから「到対馬嶋浅茅浦、舶泊之時作歌」(15-3697~3699)の歌群に望郷の念を歌った遣新羅使の歌がある。さらに「在根良(ありねよし) 対馬乃渡(つしまのわたり)」(1-62)とあり、「在根良」は対馬にかかる枕詞とされ「在」は『攷證』が「荒る」の意であるとするが、「荒」のラがリに転ずる例がないことから現在は「あらわれる、存在する」の意が定説である。「根」は「対馬の嶺(ね)」(14-3516)と詠まれるように「嶺(みね)」であり、「よし」は「あおによし」「あさもよし」などの「よし」と同じで詠嘆をあらわすと思われる。対馬にある山が海路の目印になったことから賛嘆の意を込めた言葉であると思われる。 |
---|