テキスト内容 | けやきの古名。ニレ科の落葉高木。東アジアの山野に自生し、葉は狭卵形で先はとがり、縁には鋸歯がある。4~5月、新葉とともに淡黄緑色の小さな花が咲く。果実は堅く、球形で10月褐色に熟す。樹の勢いが盛んなことから、古来神聖視され、その樹下も聖域とみなされていた。紀では法興寺(飛鳥寺)の槻木の下で重要な儀式や行事がたびたび行われていたことが記されている。また雄略記の「三重の采女」では、百枝槻(ももえつき)の下で豊楽(とよのあかり)を催したとき、杯に浮かんだ槻の葉にちなんで、天皇の治世を讃美する歌を詠む。歌は「新嘗屋に 生い立てる 百足る 槻が枝は 上つ枝は 天を覆へり 中つ枝は 東を覆へり 下枝は 鄙を覆へり」(99)というように「日代の宮」を居所とした景行天皇の理想的な治世を槻木に託して歌い出し、「長谷の百枝槻」と重ねることによって雄略天皇の治世が景行を受け継ぎ繁栄したことを詠む。また万葉集においては、人麻呂の泣血哀慟作歌に「槻の木のあちこちの枝に葉が一面繁るように幾重にも恋した妻」(2-210、213)というように葉が繁茂する様子を恋の深さに喩えている。また「ユ槻(弓槻)」(11-2353)、「イハヒ槻(斎槻)」(11-2656)などの形で用いられ、11-2353は人目をはばかって槻の下に妻を隠す姿を詠み、「隠り妻」のイメージを引き出している。2656は「隠り妻」を槻木に擬えており、神聖な槻木から神迎えの場を想起させている。→<a href="http://k-amc.kokugakuin.ac.jp/DM/detail.do?class_name=col_dsg&data_id=68545">こもりづま〔隠妻〕</a> |
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