テキスト内容 | 刀。「断ち切る」ことからいう。剣との差は明確ではない。記の神代では、「都牟刈之大刀」「草那芸之大刀」「生大刀」など、武器としての大刀が見える。その他の用法としては、八千矛の歌(記歌謡)に「大刀(多知)が緒も未だ解かずて」と見え、景行条には、美夜受比売のもとに置いてきた「草那芸之剣」を思って、「嬢子の床の辺に我が置きし剣の太刀(都流岐能多知)」と詠んでいる。万葉集では、「大刀取り佩かし 大御手に 弓取り持たし 御軍士を あどもひたまひ」(2-199)と武力の象徴として大刀を用いている例や、「焼き大刀」のように焼き鍛えた大刀という製法も見え、特に鋭利な大刀を示す例(6-989、9-1809)などがある。一方、12-2096で大刀の緒を解かないうちに夜が明けてしまったとして、八千矛の歌の類型と見られるものや、身につけることから相手の側にいたいという思いを詠む歌(20-4347)、女性が剣を帯びる夢によって男性と逢う願いを象徴的に示す歌(4-604)など、男性そのものの比喩としての用いられ方も存する。また、「湯原王の打酒の歌」(6-989)は、大刀による酒誉めの儀礼を示していると考えられており、儀礼に際する祭器としての役割も持っていたと考えられる。 |
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