テキスト内容 | 「すが」とも。カヤツリグサ科スゲ属の総称。種類が多く、山野に自生する。1つの根から何本も生える菅の性質をふまえて、子を持たぬ八田若郎女を「一本菅」に喩えた歌謡が仁徳記に見られる(記歌謡64-65)。万葉集には「すげ(すが)」を素材とした歌が多く、全49首ある。笠を詠むものが10首あるのは、蓑や笠をつくるのに葉が多く用いられたためである。枕詞として「菅の根」が詠まれることも多く(13例)、長く絡み合っていることから、そのうち9例が「ねもころ(ごろ)」にかかる。「ねもころ」の音が、「根-もころ」(「もころ」は「如し」の意)として「根のような」の意を表すからとも、根の絡み合った状態「根(ね)も凝(ころ)」(「凝る」は「固まる」の意)を連想させるからともいわれる。万葉集中には他にも、「山菅の」(5例)「白菅の」(3例)「ま菅よし」(1例)などの枕詞が見える。これらの例は、「菅」がいかに古代人の生活に密着した植物であったかをうかがわせるが、その一方で菅は、「天なる ささらの小野の 七ふ菅 手に取り持ちて ひさかたの 天の河原に 出で立ちて みそぎてましを」(3-420)とあるように、天上に生えた神聖なもので、これによってケガレをはらうことができるとも考えられていた。祝詞(六月晦大祓)にも、天つ菅麻を細かく裂いて(ケガレをはらい)祝詞を宣るというくだりが見える。 |
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