テキスト内容 | 菅が地下に延ばした毛状の部分。菅は山野、特に水辺や湿地帯に自生するカヤツリグサ科の多年草。スガはスゲの交替形。カンスゲ・カサスゲ・ジュズスゲなどの総称。葉は線形で先がとがっている。この草を刈り取って笠や蓑などを作る。枕詞「菅の根の」はその根の長いことから「おほほしく君を相見て菅の根の長き春日を恋ひ渡るかも」(10-1921)のように「長し」に、その長い菅の根が乱れている意から「否と言はば強ひめやわが背菅の根の思ひ乱れて恋ひつつもあらむ」(4-679)と「乱る」に、同音「ね」の繰り返しから「あしひきの山に生ひたる菅の根のねもころ見まく欲しき君かも」(4-580)と「ねもころ」にかかる。また、その根の絶える意から、「杜若咲く沢に生ふる菅の根の絶ゆとや君が見えぬこのころ」(12-3052)のように序詞として「絶ゆ」が導き出される場合もある。以上、見てきた例のように恋歌の技法として詠まれることの多い一方で、「真鳥住む卯名手の神社の菅の根を衣にかきつけ着せむ子もがも」(7-1344)のように菅の根を衣に結ぶ聖習俗のあった可能性や、「石に生ふる菅の根取りてしのふ草祓へてましを」(6-948)のように祓えに使用した痕跡も見られる。 |
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