テキスト内容 | 夜。「さ」は接頭語。「さ夜更けて」「さ夜中に」「さ夜そ明けにける」等の表現がみられる。これらは主に①船が停泊する時間帯(3-274、7-1224、1225、1229、9-1732、14-3348、15-3627)、②雁や霍公鳥などが妻を恋うて鳴く時間帯(4-618、9-1701、10-1937、1938、2224、19-4141、4180、4181)、③逢瀬・妻問いの時間帯(8-1659、10-2032、2060、12-2906、13-3310、19-4163)、④男を待つ時間帯(12-3220、13-3280、3281、3321)などとして詠み込まれる。また、5-868、871~875、883には「松浦佐用姫(まつらさよひめ)」が見え、871序に大伴左提比古(おおもとのさでひこ)が朝命により蕃国に派遣されるに際して、その船出のときに松浦佐用姫が嘆き、高山の嶺に登って領布(ひれ)を振ったとある。肥前国風土記松浦郡条には弟日姫子という名で記され、大伴狭手彦と別れて後、狭手彦に似た男が毎夜通って来たが、その正体は褶振峯(ひれふりのみね)の畔の沼の蛇であり、姫は沼に沈んでしまったとある。これらの記述から佐用姫のサヨは、巫女性を示す語ともいわれる。 |
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