くし・くすし

大分類万葉神事語辞典
分野分類 CB文学
文化財分類 CB学術データベース
資料形式 CBテキストデータベース
+項目名くし・くすし;奇し
+表記奇し
TitleKushi/Kusushi
テキスト内容不可思議・奇異・霊妙な現象を示す語詞で、超自然的・神秘的な霊異に接し、それを崇敬する心情を表す。「クシブ」「クスバシ」等の派生語をもつ。また、「薬」字の訓「クス(リ)」も同根とされる。類語「アヤシ」が霊異の現象面に対する感歎を示し、奇怪・不審の意も含む語詞であることに対し、「クスシ」はその神秘的な原動力に対する感歎を表すとされる(『時代別国語大辞典』)。『続日本紀』によると、766(孝謙・天平神護2)10月20日発布の宣命(第41詔)において、隅寺の毘沙門像から照り輝いて美しく形状も整った仏舎利が出現したことを「特に久須之久(くすしく)奇(あや)しき事」と述べており、その霊妙であることを強く訴えている。万葉集には全5例みられるが、一字一音表記である大伴家持作歌(18-4125)を除き、「神」「霊」「奇」字を表記しているため、確例とするには注意を要する。藤原宮役民作歌では、新都建設のための丸太運搬における重要河川「泉川」の語を起こす序詞にみられ、我が国が常世の国になる瑞祥の兆(しるし)を甲羅に背負った亀を「くすしき亀」と詠む(1-50)。中国の故事を踏まえた描写であり、当該語詞を用いることによって亀の神秘性・尊貴性を表現している。また、自然景観を讃美する際にも詠まれており、長田王作歌では筑紫国水島の神々しい様子を「くすしくも」(3-245)と歌い、高橋虫麻呂歌集歌には、富士山を讃える際に言いようも名づけようもないほど「くすしくも います神」と表現する歌(3-319)がある。大伴旅人作歌では、風待ちのために停泊した淡路島において海の神を「くすしきものか」と讃えている(3-388)。一方、大伴家持作の七夕歌では、牽牛(彦星)と織女の伝説を讃える表現として用いており、下界に生きる我ら人間が、天上界におけるこの伝説を非常に神秘・霊妙なものととして、秋が訪れるごとに語り継いできた旨を詠む(18-4125)。
+執筆者小林真美
コンテンツ権利区分CC BY-NC
資料ID31942
-68506402009/07/06hoshino.seiji00DSG000332くし・くすし;奇しKushi/Kusushi不可思議・奇異・霊妙な現象を示す語詞で、超自然的・神秘的な霊異に接し、それを崇敬する心情を表す。「クシブ」「クスバシ」等の派生語をもつ。また、「薬」字の訓「クス(リ)」も同根とされる。類語「アヤシ」が霊異の現象面に対する感歎を示し、奇怪・不審の意も含む語詞であることに対し、「クスシ」はその神秘的な原動力に対する感歎を表すとされる(『時代別国語大辞典』)。『続日本紀』によると、766(孝謙・天平神護2)10月20日発布の宣命(第41詔)において、隅寺の毘沙門像から照り輝いて美しく形状も整った仏舎利が出現したことを「特に久須之久(くすしく)奇(あや)しき事」と述べており、その霊妙であることを強く訴えている。万葉集には全5例みられるが、一字一音表記である大伴家持作歌(18-4125)を除き、「神」「霊」「奇」字を表記しているため、確例とするには注意を要する。藤原宮役民作歌では、新都建設のための丸太運搬における重要河川「泉川」の語を起こす序詞にみられ、我が国が常世の国になる瑞祥の兆(しるし)を甲羅に背負った亀を「くすしき亀」と詠む(1-50)。中国の故事を踏まえた描写であり、当該語詞を用いることによって亀の神秘性・尊貴性を表現している。また、自然景観を讃美する際にも詠まれており、長田王作歌では筑紫国水島の神々しい様子を「くすしくも」(3-245)と歌い、高橋虫麻呂歌集歌には、富士山を讃える際に言いようも名づけようもないほど「くすしくも います神」と表現する歌(3-319)がある。大伴旅人作歌では、風待ちのために停泊した淡路島において海の神を「くすしきものか」と讃えている(3-388)。一方、大伴家持作の七夕歌では、牽牛(彦星)と織女の伝説を讃える表現として用いており、下界に生きる我ら人間が、天上界におけるこの伝説を非常に神秘・霊妙なものととして、秋が訪れるごとに語り継いできた旨を詠む(18-4125)。333くし・くすし奇し小林真美く1

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