テキスト内容 | にわとりの古名。鳴き声に基づく名称(『時代別国語大辞典』)。万葉集では、全7例みられる。中国・朝鮮から伝来した家禽で、「野つ鳥」である「雉」に対し、「家つ鳥」「庭つ鳥」を枕詞として冠した(13-3310等)。「暁と鶏は鳴くなり」(11-2800)とあるように、にわとりは夜明けを告げる鳥である。ゆえににわとりの鳴き声は、恋人の家を辞するべき時を知らせ逢瀬を遮る障害とみなされ、柿本人麻呂歌集の七夕歌では時間を惜しむ牽牛が、夜明け後も鳴くことを禁じている(10-2021)。また、その鳴き声は「里とよめ鳴くなる鶏の」(11-2803一云)と詠まれるほどに大きく、何度も重ねて発声されることから(19-4233、4234)、「呼び立てて」を導く序詞にも用いられる(11-2803)。一方、作者未詳歌7-1413には「長し」の語を導く序詞として「鶏の垂り尾の乱れ尾の」と詠む例もあり、長い尾羽が目立ったために生み出された修辞である(折口信夫『萬葉集辞典』)。このほか、単に「鳥」と記す場合にも分類しうる例があろう。なお、太陽や除魔に関わる霊鳥でもあり、記紀・天の石屋神話に登場する「常世の長鳴鳥」は、太陽を招くためににわとりの鳴き声を擬したものである。 |
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