テキスト内容 | 未詳だが、現在のカシワとは異なる品種。椹・側柏などヒノキ科に属する植物の総称(『日本国語大辞典』)、イチイ科の常緑高木であるカヤ(『時代別国語大辞典』)等、諸説みられる。品種を限定せず、冬も色を変えない常緑樹を漠然とさしたものか(『新全集』)。万葉集には、母・大伴坂上郎女宛の歌を家婦坂上大嬢に頼まれて代作した大伴家持の長歌「松柏の 栄えいまさね 貴き我が君」(19-4169)1例のみ。「松柏」は、漢語「松柏」の訓読語とみられ(『釈注』)、両者ともに樹齢が長く冬も枯れることのない常緑樹であることから、いつまでも変わることなく栄え続けるものとみなして、「栄ユ」を導く枕詞として用いられたとみる。坂上郎女の五十賀を言祝いで作成されたとみられる当該歌には、京から遠く隔たった越中国より坂上郎女の永遠に変わらぬ繁栄を祈りつつ、再会を願ってやまない家持と坂上大嬢の心情が詠み込まれている。このほか出雲国風土記をみると、意宇郡は「栢 字或は榧に作る」とし、同・楯縫郡には秋鹿郡と楯縫郡2郡の堺である自毛埼について「崔嵬しく、松・栢欝れり」と記している。嶋根郡や秋鹿郡等の記事にも同地の山野自生の植物として登場する。 |
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