テキスト内容 | 腰の辺りで衣を巻きつけてしめる紐。その種類には「倭文機(しつはた)帯(日本伝統の模様の帯)」「絹の帯」「韓(から)帯(大陸様式の帯)」「引(ひき)帯(小帯)」「狭織之(さおりの)帯(幅の狭い帯)」がある。万葉集における詠まれ方としては、比喩的に用いられることが多い。まず、男女の交わりを示すものとして「帯を解く」という表現がある(3-431、12-2974)。また、恋の苦しさの表現として、通常一重に結ぶ帯を、身がやせ細ったので三重に結ぶとするものがある(4-742、9-1800等)。また、神聖な山を擬人化し、川を帯に見立てる表現がある。例えば、三笠(みかさ)の山が帯にする細谷(ほそたに)川(7-1102)、三諸(みもろ)が帯にする泊瀬(はつせ)川(9-1770)、神奈備(かんなび)が帯にする明日香(あすか)の川(13-3227、13-3266)がある。特に9-1770と13-3227では、山という言葉を使わず神が帯にしている川と表現している点に、意識的な擬人化が認められる。また、「倭文機帯を 結び垂(た)れ 誰(たれ)といふ人も」(11-2628)は、帯を垂らすことから「誰」を引き出す序として機能している例である。息長帯比売命(おきながたらしひめのみこと)(神功皇后(じんぐうこうごう))のように、人名のタラシを「帯」で記す例があることから、帯は垂らすものという意識があったことが知られる。 |
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