テキスト内容 | 悪質の流行病(疫病)。エだけにも疫病の意がある。ヤミは病ムの名詞形。エヤミは万葉集に1例で、15-3688の題詞に、壱岐島で雪連宅満(ゆきのむらじやかまろ)が「鬼病(えやみ)」に冒されて死去したとある(「鬼病」をキビョウと訓む説もある)。「鬼」は邪悪な霊鬼もしくは死神の使いの意か。『全集』によれば、漢語「鬼病」はもともと『法苑珠林』などの漢訳仏典で使われた語で、鬼にとりつかれた病を指したが、それが転じて疫病を意味するようになったという。そして具体的に雪連宅満が何の病に冒されたかであるが、『続日本紀』の735(天平7)年、737(天平9)年条では、疫病が流行し多くの官人が死亡したとあり、この疫病は天然痘もしくは麻疹ではないかと考えられている。雪連宅満の死亡原因もこの天然痘か麻疹であろう。ところで、万葉集以外に目を向けると、エヤミという言葉は記紀にも見られる。まず記の崇神条では、「役気(えやみ)」が大流行したがこれは大物主(おおものぬし)大神の意志によるものであったとする。同様に紀の崇神7年11月条では、大物主大神と倭国魂神を祭ることで「疫病(えやみ)」が途絶えたとある。エヤミは古代、神や鬼に原因があると考えられていた。 |
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