テキスト内容 | 木の枝葉を頭髪に挿したり、金製品や鳥獣の尾などを冠に添えたりして飾りとしたもの。かざしと混同されたため、万葉集ではかざしとして詠まれている歌が多い。うずは集中に3例ある。「神主の 雲聚の玉かげ」(13-3229)のうずはかげ、すなわちヒカゲノカズラとみられ、そのほか、「島山に 赤る橘 宇受にさし」(19-4266)、「島山に 照れる橘 宇受にさし」(19-4276)とあるように、常葉の木である橘、およびその実が用いられたことが知られる。これらの例から、遊宴などに際して官人たちが飾りとしてつけたり、神主が神事を執行する際にうずをつけたりしたことがわかる。神主が神事の場において身につけたのは、単なる装飾品としてではなく、神事に奉仕する者のしるしとしてつけたものと考えられる。記には、景行天皇条の思国(くにしのひ)歌に命の無事な人は平群の山の大きな樫の木の葉を「宇受」に挿せとあり、長命を祈って常緑樹である樫の葉を髪に挿したことが知られる。うずの意味としては、ヒカゲノカズラといった常緑性シダ植物や、橘や樫といった常緑樹を用いることから、本来はその植物の持つ生命力を基にして、長寿を願うためのものだったとみられる。その形状については、『古事記伝』が説くように、古くは枝葉をそのまま髪にさしただけの素朴なものだったようである。それが、紀の611(推古天皇19)年5月5日条に、菟田野における薬猟に際して、この日に諸臣の服の色は皆冠の色に従い、おのおの「髻華」を挿し、大徳・小徳は金、大仁・小仁は豹尾、大礼以下は鳥の尾を用いたとあるように、冠位に応じてではあるが、金製品や鳥獣の尾が冠に添える飾りとして用いられるようになる。紀の647(孝徳天皇大化3)年の新冠位制を述べる段においては、冠につける縁と「鈿(うず)」によって冠位の差異を表し、その鈿の形は蝉に似ている、とある。 |
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